迫られる中小企業のカーボンニュートラル対策

Melpo編集部

 

2021年国連での政府表明


2021年11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議において、岸田首相は、「2030年度に、温室効果ガスを、2013年度比で46%削減することを目指し、さらに、50%の高みに向け挑戦を続けていくこと」を内外に約束し、また、自動車のカーボンニュートラルの実現に向け、「2兆円のグリーンイノベーション基金を活用し、電気自動車普及の鍵を握る次世代電池・モーターや水素、合成燃料の開発」を進めることを表明した。


外部環境変化による産業への影響


トヨタ自動車の豊田章男社長によると、内燃機関以外のクルマしか生産できなくなると、国内生産が800万台以上削減されることになり、国内雇用の大半を失う恐れがあるという。

同社では同年6月に、2035年までに世界の自社工場で二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする目標を発表した。これまで50年に達成するとしていた目標を前倒しした。自動車の塗装や、鋳造工程に新技術を取り入れ、生産に伴うCO2排出を抑える上、再生可能エネルギーの利用を増やす。

トヨタは直接取引している世界の主要部品メーカーに対しても、21年のCO2排出量を前年比で3%減らすよう求めており供給網全体での脱炭素化を進めている。


中小企業のカーボンニュートラルに対する意識は?


カーボンニュートラル化は自動車産業に限らず、幅広い産業に非常に大きな影響を与えることが予想されている。

そのためトヨタに限らず、大手企業のトップは異口同音に危機感を表明し、具体的な取り組みに着手している。その一方で、中小企業の経営者は、カーボンニュートラル化に対してどのような意識を抱いているのか。

商工中金が2021年7月に実施したアンケート調査「中小企業のカーボンニュートラルに関する意識調査(2021年7月調査)」の結果をみてみよう。この調査は商工中金の取引先約1万社に調査票を郵送し、5,297社から回答を得ている。従業員規模が30人以下の企業が回答者の48.8%を占めている。


実施しているのは約1割の現状


まず、カーボンニュートラルの促進により、6つの観点で自社の経営に好影響・悪影響いずれかがあるとした企業は71%に上るが、「全て影響なし」と捉える企業が26%もあった。同アンケートでは、カーボンニュートラルの影響への方策の検討状況についても尋ねている。

それによると、全体では、「実施している」は10.8%にとどまり、「検討している」(9.2%)を加えても、20%しか対応していないのである。

ただし、年商「100億円超」企業でもこの比率が71.2%もあるので、中堅企業においても対策が遅れていることは否定できない。

商工中金の調査では、カーボンニュートラル化への対応の実施・検討に至る動機についても聞いており、「方策の検討・実施の動機となり得るもの」としてエネルギーコストの削減、補助金・税制への優遇、規制強化、企業イメージの向上などの回答が多かったが、「外部からの要請」と回答したものも593社(全体の約20%)あった。

出典:商工中金「中小企業のカーボンニュートラルに関する意識調査(2021年7月調査)」

「CO2削減1トンで7700円補助」環境庁が設備投資支援


中々カーボンニュートラル化が進まない中小企業への積極的な参加を促すため、環境省は2021年度補正予算案に30億円組み込んだ大規模な支援策を開始している。

中小企業が温暖化ガス排出量が少ない機器を新規導入した際、削減量に応じて補助金を増額する事業を始めている。エネルギー効率の高い空調機やヒートポンプ給湯器、自然冷媒を使った冷凍庫などの省エネ設備を想定し、二酸化炭素(CO2)換算で年間1トン削減ごとに最大7700円を補助し、1件あたり5000万円が上限となる。

景気で経営に影響を受けやすい中小企業の設備投資を下支えし、エネルギーコストも減らしながら、脱炭素への移行を促す狙い。

30年度の排出削減目標の達成向けて、いよいよ中小企業が本格的に考えざる負えない環境が整備されつつある。


カーボンニュートラル化を進める先進的な中小企業


気候変動対策の世界ルール「パリ協定」達成に貢献する企業の目標を「サイエンスベースドターゲッツ(SBT)」として認定する国際的な活動がある。年2・5%以上のCO2削減ペースという高い値が目安となっており、世界では700社以上が認定済み。日本企業は99社が認定されているが、その内の15社が中小企業となっている。

出典:日刊工業新聞2021年5月12日

自動車部品のプレス加工を手がける協発工業(愛知県岡崎市)は、自社の排出量を30年までに18年比50%削減する目標を設定した。持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する具体的な活動として温暖化対策に着手し、SBTの認定を受けた。

協発工業は「遅かれ早かれ、取引先から排出削減を求められる」と見通し、要請が来る前に高い目標に向けて着実に削減策を打つことで、いざ要請が来ても慌てずに対応できる強みがあるとしている。

その他にも、認定企業の声を拾うと、社員のモチベーションアップや、取引先との関係構築、新規顧客の獲得など予想外のプラス効果もあったようである。


カーボンニュートラル化を進めるために必要な要素


国や地方自治体による支援と優遇措置、それと取引先から突き付けられる要請などにより、政府が目標とする30年度までにはカーボンニュートラル化の動きは規模の大小を問わずあらゆる企業が取り組まなければならない状況となるのは明白である。一方で、対策の遅れた企業は競争力の低下と、場合によっては取引先の減少にも繋がる重大な損失となる可能性がある。

ただ、CO2の削減に取り組む企業にとって必要な要素は次の3つのみであると考えている。


  1. 使用エネルギー量の把握とCO2削減

  2. さらなる省エネルギー化の実現

  3. 再生可能エネルギーの利用


1.使用エネルギー量の把握とCO2削減


自社が事業を行うにあたって、使用されるエネルギー(燃料、電力など)が1日にどのくらいの量であるのかを把握する事。まずは利用明細などを確認して、月ごとのエネルギー量を正確に把握することが肝心である。エネルギー量を把握できたら、次にCO2に換算することで現状のCO2排出量が決まるので、この量から何%削減できるのか、機械の稼働状況や季節変動要因(暖房、冷房の使用)などの内因性要素や、取引先までの距離と納品回数、機械の省エネ性能などの外因性要素を組み合わせて、どの要素を削減ターゲットにすれば一番効果的なのかを判断する。

ターゲットが決まれば、必要な対策を実施し、できるだけデータを細かく取ることでCO2削減量を見える化することが重要である。


2.さらなる省エネルギー化の実現


すでに1で網羅的な取り組みをしていて、削減ターゲットについては洗いざらい検討・実施されながらも、CO2の削減量はこれ以上増やせないという場合、DX化と同様に事業プロセスの抜本的な見直し・改革により更なる省エネルギー化が実現できる可能性がある。

作業の遠隔化や、デジタルツインによる工程の大幅短縮、さらに文書のデジタル化やIoTを活用した省力化などを取り入れることなどが考えられる。


3.再生可能エネルギーの利用


1,2を試すことができないのであれば、太陽光発電や熱電発電、バイオマス発電など再生可能エネルギーを利用したCO2削減策が一番手っ取り早い方法である。

ただし、効果はあくまで限定的なので持続的な削減を図るには、1,2を組み合わせることが必須といえる。


広がるカーボンニュートラル化への支援の輪


地域の経済を支援している、経産省の関東経済産業局が中小企業のカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)を後押しする取り組みを強化している。4つの重点施策を決定し、セミナーを開催するほか、関係団体とのネットワークも構築。地域企業が抱える課題に応じて、解決策を提供しやすい体制を整える。

2021年10月に決定した重点施策は①イノベーション支援②サプライチェーン(供給網)支援③自治体の取り組み支援④金融機関との連携による支援――の4項目。

イノベーション支援では、世界的な脱炭素の潮流を地域企業の稼ぐ力を向上させるチャンスと捉え、新事業の創出や事業拡大を支援する。企業や研究機関が互いのノウハウを持ち寄って開発を進める「オープンイノベーション」を活用し、新事業創出を目指す企業と、技術を保有する企業を結びつけたい考えだ。

出典:中小企業基盤整備機構

一般財団法人日本エネルギー経済研究所や中小企業基盤整備機構など約10団体とも手を組み、情報提供や経営支援で協力する。さらに地元自治体や金融機関とも連携しながら、支援の輪を広げる。


終わりに


前述の通り、中小製造業においてカーボンニュートラル化への移行は待ったなしの状況だと思われるが、経営者の間では未だに意識が低いのが現状である。

一方で、早く対策を打った事業者には国や自治体などの支援が受けられるというメリットの他にも、取引先に対しても良いアピールに繋がり実利もある。さらにカーボンニュートラル化とDX化は事業構造やプロセスの変化という意味では似通っており、ある意味ではイノベーションへのキッカケになるともいえる。

国内市場が縮小し、成長の頭打ちが必至な中小製造業によって、このような時流の変化を捉えて事業チャンスとできるか否かが生き残りを分ける試金石となることは疑いない事実のように思える。


#カーボンニュートラル

#CO2削減補助


参考記事:

中小企業のカーボンニュートラル化に向けた地域金融機関の役割

https://www.rieti.go.jp/jp/columns/s22_0008.html

中小企業にカーボンニュートラルはどう見えているのか

https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2202/03/news065.html#utm_term=share_sp

トヨタ、35年に自社工場のCO2排出実質ゼロ 目標前倒し

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD118250R10C21A6000000/

中小企業が温室効果ガス「50%削減」目標を設定して得た営業効果

https://newswitch.jp/p/27210

関東経産局、中小企業の脱炭素化を後押し

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC149YE0U1A211C2000000/

中小機構、脱炭素分野のオープンイノベーション促進 同分野でマッチング支援

https://www.kankyo-business.jp/news/030696.php


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